5月28日 エッセイスト

今日、私は朝から浮き足立っていた。


どれほど浮き足立っていたかというと、
やるべき仕事があったにも関わらずその仕事のことをすっかり忘れて、
「やることなくてヒマだしな〜」と、まだOKをもらっていないラフの本描きをはじめてしまったほどだ。

OKをもらっていないラフの本描きを進めるというのは、大きな賭けなのである。
例えば、メロンのラフを描いたけどクライアントに「もう夏なんでやっぱりスイカでいきましょう」と言われれば、鉛筆描きのメロンは存在意義を喪失する。

だから、メロンをバッチリ完成させたあとで、「やっぱり夏なのでTUBEでいきましょう」と言われたら、静かにおじさん4人を描きはじめるしかないのだ。
(いくらメロンがもったいないからと言って、メロンにマイクやギターを持たせるわけにはいかない。私もイラストレーターのはしくれだ。)

なので、もう一度言うが、OKの出ていないラフの本描きを進めるというのは賭けなのだ。
(賭けにうってでたのはヒマだから以外にスケジュールがちょっと厳しいから早めに仕事進めておきたかったという気持ちもあった)

そして私はその賭けにあっさりと負けた。

今日のうちに大幅な修正が来たのだ。びっくりだ。私、びっくりだ。


 しかも、「やることなくてヒマだしな〜」と思ったところからスタートしているわけだが、そもそも実はやることはあったのだった。
他の案件で進めておける仕事はあったのに、それを完全に忘れて、完全にムダな時間を過ごしたのだ、私。


さて、それほどまでに私が浮き足立っていた理由。

それは、イス。

そう、今日、イスが届いた。




********




 イスについては以前の日記を読んでいただきたい。

読むのが面倒という方のために以下に要約を書いた。

●イス買い替えたい。
●大塚家具で理想のイスを見つけた。
●お値段18万円っ!




その後、私はもう一度、大塚家具に行ってこのイスに座った。

このイスの良さについては前回座ったときに熟知していたし、
何度座ってもやはり素晴らしかった。
(きっとイスの後ろに「for fukui hiroshi」と書いてあるんだと思う。)

私は未来を予知していた。私は近々このイスをしぶしぶ購入するに違いない。

しかし、イスに18万円というのはヒョイと決断できることではない。
その日も購入手続きはせずに店を出た。


そして家に帰って考えた。
背もたれがビヨンビヨンになってイライラする今のイスに座りながら考えた。

どうせいつか買うなら早く買って早く座って早く幸せになるべきだ、と。




*****




そして、はじめて大塚家具を訪れてから7日目、私は決心し、みたび大塚家具に訪問した。

そして、カードでイスを購入した。
ドキドキした。
何度も値段を思い出しては「イスに?」「イスに?」と思った。


実をいうと、18万円から値引きをしてもらっていた。
大塚家具の企業秘密だろうから金額を明らかにすることはできないが、18万からするとちょっと軽やかな印象の金額になった。
(とはいえ…、なのだが。)


【ヒント】
「8」という数字をマッチ7本で作った場合、そのマッチ7本のうち2本をとりのぞいた時に出来上がる数字。(但し2ではない。3でもない。)




*****






そんなこんなでイスが届いた。

肘掛けを調整したり、クッションを敷いたり、机の高さを変えてみたりなどしたら、「ほんとうに買ってよかった」と思える座りごこち、それがともてうれしく、私は浮き足立っていたのだ。
このイスに座ってこれからもがんばって生きていこうと思う。


 
イスの購入を決めてから私は緊縮財政を敷いている。
自炊が多くなっている。
明日は塩焼きそばを作ろうと思っている。
今年の夏はあたらしいTシャツを買わないことにしている。
ごはんをおごってくれる人が現れるのを待っている。