連載『ロブスター』

フィルマガでのイラストコラム連載記事です!
読んでいただけると嬉しいです。



独身は禁止であり、独身のままだと動物に変えられる世界を描いたシュールなコメディ映画が『ロブスター』。コリン・ファレル主演で、第89回アカデミー賞脚本賞候補にもなった隠れた名作ですよ。

独身者は施設に入れられて、そこで新たな45日以内にパートナー探しをしなければなりません。失敗したときに変身させられる動物は自分で選ぶことができます。大抵の人は犬を選ぶので世界に犬が増えている、とのことです。

セクシースターのコリン・ファレルがお腹ポッコリの非モテ中年に扮して、妻と別れてこの施設に入れられ新たなパートナーを探すべく奮闘する姿が悲しくも可笑しい。

意中の相手に近づくためいろんな技を駆使しますが、どれも裏目に出そうなものばかり…。 やりがちな失敗例の数々が羅列されていますので、恋愛下手男子のフリ見て我がフリ直していきましょう!


続きはコチラで→映画『ロブスター』

よろしくお願いします!






ハリエットと呼ばれた女 〜アニーの数奇な運命〜

『ラウンドヘイの庭の場面』(1888年製作の映画)





これは世界最古のフィルムってことですかね。
たぶん撮影実験か、カメラの販売プロモーション用かと。
※有料公開した世界最古の映画は『ラ・シオタ駅への列車の到着』らしいです。


ルイ・ル・プランスによる約2秒の動画。
相当金持ちの家の庭で、4人のレディース&ジェントルメンがダンス(というより移動)している様子。

ウィキペディアによると、向かって右奥のサラおばあちゃんは「回転しながら後方に歩く」ということだけど、どうみてもヨロヨロしながらただ後ろに下がっているだけ。
そしてこの撮影の10日後サラおばあちゃんは逝去なさいます。

ジョセフおじいちゃんは、白ヒゲを蓄えてロングコートの裾を大きく揺らしながらサラおばあちゃんの周囲を45度ほど周遊。
ジョセフおじいちゃんが一番楽しそうに動いているので、ジョセフおじいちゃんはこの撮影にノリノリだった模様。

アドルフは「2秒でそんなに移動できるのか!」と驚かせるほどに長い脚でスタスタと右から左へ移動する。
アドルフはこの映画の監督であるルイ・ル・プランスの息子である。

そして謎の女、ハリエット・ハートレイ
この女性についての記載はない。
ハリエットについて調べてみたので、下の方を読んでいただきたい。
もしかしたら、ハリエットアドルフは付き合っていたか、もしくは周りの大人たちによって結婚を勧められていた2人かもしれない。
しかしハリエットアドルフの動きにまったく親密さは読めない。
アドルフはちょっと照れているようにも見えるが、ハリエットの回転からは「冗談じゃない!何なの!」感が満載。

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現存する最古のフィルムに人間の動作が写っていることは興味深い。

「写真に写ると魂が抜かれる」っつって写りたがらない人もいたというのだから「動画なんてもってのほか!」ってなりそうだけど。
しかも、たとえばフェルメールの「牛乳を注ぐ女」のような日常的な動作を写すのではなく、この撮影直前にとっさに振り付けしたような動きを撮ったのも何故か。
動画は単なる記録技術にすぎなくて、芸術になるうるものだなんてそのときには思いもしなかったのではないか。
実際、ルイ・ル・プランスは発明家であり、カメラの特許を出願したりカメラの販売旅行をするなど、なかなかのやり手。
(妻のエリザベスは芸術家だったが)

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こ動画には老夫婦と若い男女が意図的に対比して描かれている。

女性は比較的おとなしい動作だが、男性はだいぶ快活に動いている。
当時の男女差が現れているのかもしれない。

老夫婦の年齢は不明だが、
サラおばあちゃんがこの10日後に亡くなってるのでだいぶ高齢かと。

監督のルイ・ル・プランスが撮影時47歳であることから息子アドルフは24歳くらいではないかと推測。
ハリエット・ハートレイはこの時15歳である可能性が高い(詳細は下に記述した)。

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どうしても僕には、この5人(監督ルイも含めた)に『アベンジャーズ』を観せたいという未来人としての傲慢な欲望が湧いてくるけど、世界最古のフィルムとして焼きついている5人の純真さを穢してもいけない。

あ、サラおばあちゃんはこの10日後に亡くなったわけだから、きっと家族はサラおばあちゃんの元気な後方移動を何度も見直したはず。
てことは、動画が単なる科学技術ではなく、人の感情に寄り添うものだということを世界の誰より早く気づいた人たちでもあるかも。
ちなみにルイ・ル・プランス自身もこの2年後、列車の中で謎の失踪を遂げている。
(2003年、パリ警察の記録の中からル・プランスによく似た1890年の溺死体の写真が見つかっている)


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謎の女 ハリエット・ハートレイ。

ハリエット・ハートレイを調べていたらこのサイトにぶつかった。
http://www.imdb.com/name/nm1799952/bio?ref_=nm_ov_bio_sm

トリビアのとこで、彼女の名前は「アニー・ハートレイであり、ルイとルイの妻エリザベスそれぞれの自伝にも彼女のことをアニーと書いてある。誰かが間違って〝ハリエット・ハートレイ〟と記載してしまったのだ」と書いてある。

2017年の記事(https://videonett.no/roundhay-garden-scene/)ではこれ採用して書かれている。
これを信じると、アニールイエリザベスの共通の友人である言える。
「撮影するから来てよ」と頼まれたのだろう。

しかしこれ(http://www.imdb.com/name/nm1799952/bio?ref_=nm_ov_bio_sm)によるとアニーは撮影時15歳だったことになる。若すぎないか。
と思って見直してみると、当時の15歳は大人びてたかもしれないし、15歳でも十分大人としてこれくらいの衣装は普段から着てたかもしれないし、撮影用に着たかもしれない。

いずれにせよ、アニー・ハートレイの追跡はここで終わった。

これから永遠にハリエット、いや、アニーは未来人である我々に背を向け続けるのである。



上半期93本

上半期で93本観てました。ちゃんと数えたら。
ちょっとやっぱ気持ち悪いですね。

オススメの10本。順不同です。

ムーンライト マンチェスター・バイ・ザ・シー  ドリーム  ひつじ村の兄弟  ストロングマン/ストロングマン 最低男の男気大決戦!!




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93本(下から見た順で並んでます)

それぞれの感想はこちら


素晴らしきかな、人生
20センチュリー・ウーマン
容疑者Xの献身
フェア・ゲーム
海底 47m
コンカッション
アナと雪の女王/エルサのサプライズ
愛犬とごちそう
ミッキーのミニー救出大作戦
紙ひこうき

ラプンツェルのウェディング
ネッシーのなみだ
ウェイン&ラニー クリスマスを守れ!
小さな時計
グーフィーのホームシアター
マッチ売りの少女
キングコング対ゴジラ
ゴジラ(1954年)
ロレンゾ ジョン・ヘンリー
ドリーム 

スーサイド・スクワッド
ありがとう、トニ・エルドマン
セールスマン
ソウルガールズ
メッセージ
夜に生きる 
ジュラシック・ワールド
ひつじ村の兄弟 
リップヴァンウィンクルの花嫁
素敵な遺産相続

マジカル・ガール
夜空はいつでも最高密度の青色だ
ザ・コンサルタント 
インナー・ワーキング
モアナと伝説の海
NO
FRANK ーフランクー
SHAME シェイム
フューリー
モーガン

プロトタイプ L-9
ジャンゴ 繋がれざる者
二ツ星の料理人
しあわせな人生の選択 
エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に
キャビン・イン・ザ・ウッズ
ベル ある伯爵令嬢の恋
黄金のアデーレ 名画の帰還
シュガーマン 奇跡に愛された男
パプリカ

葛城事件
素敵なサプライズ
ブリュッセルの奇妙な代理店
ラスト、コーション
マンチェスター・バイ・ザ・シー 
アイヒマン・ショー/歴史を写した男たち
キングコング:髑髏島の巨神
レヴェナント:蘇えりし者
SAINT LAURENT/サンローラン
ハドソン川の奇跡

ブリッジ・オブ・スパイ
サウルの息子 
オデッセイ
オートマタ
サラエヴォの銃声
皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ
エルミタージュ美術館 美を守る宮殿
俳優 亀岡拓次
ロング・トレイル!
マネー・ショート 華麗なる大逆転

シング・ストリート 未来へのうた
愚行録
孤独のススメ
フライトナイト/恐怖の夜
彼らが本気で編むときは、
ラ・ラ・ランド
家族はつらいよ
ヤング・アダルト・ニューヨーク
最高の花婿
団地妻 昼下りの情事

日本で一番悪い奴ら
ムーンライト
ヨーヨー・マと旅するシルクロード
フレンチ・ラン
アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男
ストロングマン/ストロングマン 最低男の男気大決戦!!
さざなみ
神様メール
THE NET 網に囚われた男

マネーモンスター
ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE
ボーダーライン

それぞれの感想はこちら


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フィルマガ連載記事も6本になりました。
月2ってのはなかなか大変です。。

『素晴らしきかな、人生』
『ザ・コンサルタント』
『ラースと、その彼女』
『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』
「ビフォア」シリーズ三部作
『好きにならずにいられない』




特集記事『素晴らしきかな、人生』

誰にとっても心に響くメッセージを伝えてくれるこの『素晴らしきかな、人生』を、今回はイラストで紹介したいと思います!
ウィル・スミス演じる主人公ハワードは、広告代理店の社長。
かつての彼はとても明るく、巧みな言葉遣いで社員の士気を高め、クライアントにも人望のあついカリスマ社長でした。
ところが、6歳の愛娘を病気で亡くしてからというもの、仲の良かった奥さんとも離婚をして、ずっとふさぎ込んでしまっている状態です。

→続きは、こちらで。お願いいたします。












フィルマガ特集記事『素晴らしきかな、人生』

連載『好きにならずにいられない』

43歳、オタク、女性経験ナシの大男フーシが初めての恋に奮闘するのがアイスランド映画『好きにならずにいられない』です。北欧の映画賞で主演男優賞を総ナメしているだけあって、主役のフーシのインパクトがすごいんですよ。
ジオラマが好き(第二次世界大戦ゲームという謎のゲーム)で、ラジオのリクエスト番組の常連リスナーで、会社ではちょっと(いや、かなり)いじめられていて、金曜の夜は1人でタイ料理を食べる、というのがフーシの毎日。
フーシを見ていると「初めての恋、頑張って!応援するよ!」と思わず上から目線で見てしまいそうになるんですが、実はそんじょそこらの男では敵わないくらいに男らしかった!
そんなアイスランドの妖精(?)フーシの隠された男らしさを紹介しますよ。どうぞ!




四コマ映画『ドリーム』

映画ドリーム 

ドリーム私たちのアポロ計画

ものすごくいろんな要素が盛り込まれてるのに本当に観やすい。

黒人差別、女性差別、女性の上司、男性の同僚、ロシアとの宇宙開発競争、数学、結婚、子育て、シングルマザー、さらにはキッチリと泣かせるラブロマンスも……。










軽快な演出のおかげでこれらがテンポよく楽しめます。
ファレル・ウィリアムの60年代風の新曲たちもかっこいいし。


まぁまぁまぁ何と言っても、主役の3人がステキなのですよ。
ジャネール・モネイがまず超絶美人。こんな美人どこにいたレベルの美形。
『ムーンライト』での主人公の親代わりの女性を演じた方。
これが映画出演2本目とのこと。基本歌手みたいですね。
今作では元ヤンみたいなキャラで、警察官にも食ってかかりそうなほど血気盛んな役でハラハラします。。


タラジ・P・ヘンソンは、すみません、この映画で認知しました。
柴田理恵感がスゴイですが、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』でブラピの育ての親やった方でしたか。
この映画の主役はこの人。
繊細な演技で、母であり、働く女性であり、恋する女性であり、夢見る人間である、という1人の人間の多面性を観せてくれてます。


そして、みんな大好きオクタヴィア・スペンサー。
彼女が今回もまた面白い。かわいい。
『ヘルプ 心がつなぐストーリー』と全く同じ役柄ですけどね。いいの!


あと面白いのは、悪役を演じたキルスティン・ダンスト。
誰だこの腹たつおばさんは!と思っていたらまさかのキルスティン・ダンスト。
役作りでしょうけど、顔がひどいことになってますよ。。
授賞式の時にはいつもの美しさになっていたので安心。

ケビン・コスナーはかっこよすぎ。ずるい。

**

僕はたまたま飛行機で観れたんですが、やはり映画館でも観たい。
音楽がいいのでちゃんといい音で聴きたいし、人間ドラマですけど、ロケットも飛ぶわけですからそのシーンはやっぱ大画面で。

数学の天才だっつってんのに、「黒人」で「女性」ってことでヒエラルキーの底辺にいるところからの大逆転はやっぱり痛快。もう一回観たい。

キャサリン・ジョンソンさんは今98歳でこないだのアカデミー賞にも出席されてましたね。
キャサリンさんが存命中にこの映画が公開され、評価もされて本当に良かった!


映画ドリーム 
ドリーム私たちのアポロ計画

四コマ映画『ひつじ村の兄弟』

『ひつじ村の兄弟





やっぱこういうラスト大好き。こんくらいのタイミングで終わってくれるのがなぜか好き。最高。

やっぱね、伏線全部キレイに回収して謎も全部キレイに明らかにしてキレイキレイな感じで終わるなんてものはね、「伝染病が出たら羊は全頭殺処分、小屋も全部解体&殺菌消毒して回る」ようなものですよ。

これだけ登場人物のそれぞれの心情も伝わって、地域の問題もわかって、珍しくて美しい景色も見れて、素敵なシーンもたくさんたくさんあって、もう十分十分十分十分(映画は93分)。

あと、伝書鳩ならぬ伝書犬として活躍する牧羊犬のかわいさたるや。。。

おじいちゃん2人が裸で抱き合うってのは北欧では共通のオモシロポイントなんですね。
ノルウェー映画『ハロルドが笑う その日まで』でもおじいちゃんが2人抱き合って温め合うシーンがあり印象的でしたが。

やっぱ寒い地域だから「凍死」が身近にあって、蘇生法として「裸で抱き合う」ってのが緊迫した状況にやるものだし、冷静に考えてみれば裸で抱き合うって笑っちゃうし、ってことなんでしょうね。

今回は裸にして風呂に入れてあっためる、ってのもありましたし、かなり雑な病院への搬入方法もありましたし。
いやぁ面白かったな〜。
最高最高最高。
映画館で見りゃ良かったなぁ、絶対寝ただろうけど。

『ひつじ村の兄弟

四コマ映画『夜に生きる』



ベン・アフレックってやっぱ巨大ロボット感がすごいので、ちょっとした仕草がもう面白い。
殴られて鼻折られて入院してるシーンも、お腹撃たれるシーンもちょっと笑える(ひどい…)。
自分でもその面白さをわかっているようなので今回も面白シーン満載(そういう映画ではない)。
エル・ファニングが怪演。
首の長さ、腕の長さ、肌の白さを存分に活かしてベン・アフレックの最強の敵を演じてます。
『葛城事件』の田中麗奈的な役どころ。








『しあわせな人生の選択』


『しあわせな人生の選択』

典型的なキャラクターが1人もいないのが良かった。
物語を展開させるためだけの便利だけど軽薄なキャラクターはおらず、みんな多面的で自由だから会話やエピソードがどれも自然でリアルだった。

いわゆる余命モノだけど御涙頂戴シーンはない。
破天荒に生きてきた死にゆく男とそれを自分なりに受け止める人たちの4日間を見守るように撮影されてる。

大切な人の喪失の日は誰にでもいつか来るけど、この映画はその練習というか予告編というか、ゆっくりと心の準備をさせてくれるようなものだった。

僕は犬飼ってて、犬が死ぬのは毎日恐怖だけど自分が先に死んじゃうことはあまり考えてなかった。
周りから見りゃ滑稽だろうけどこの大切な大切なワンちゃんをいったい誰に託せばいいのか。
きっと主人公と同じ決断をするだろうな。




















『しあわせな人生の選択』

『ザ・コンサルタント』

ベン・アフレック演じるクリスチャン・ウルフ田舎町の会計士。しかし裏の顔は年収1億ドルを稼ぐ命中率100%のスナイパー。
会計事務所で淡々と仕事をする姿正確な射撃やマッチョな体でのアクションはギャップがすごいけれど、主人公に二面性があるアクション映画は今となっては正直珍しくはないです。
『ザ・コンサルタント』が他のアクション映画と一線を画すポイントは、さらに一歩踏み込んだキャラクターの多面性ではないでしょうか。映画の中でウルフのキャラクター紹介に割く時間が結構長いんです。サスペンスやアクションを楽しむだけではなく、ウルフというキャラクターをじっくり味わうのが正解なのです。
それではウルフの〝譲れない7つのルール〟をどうぞご確認ください。




[4]の指フッフッが一番特徴的ですし、ここに萌えた!という方も多いのではないでしょうか。これは普段の生活にも取り入れやすいものですよ。仕事で本気出す前に指フッフッ。でもちゃんとかっこ良くやらないと自分で鏡見てやってみたら死ぬほど間抜けなおじさんになっててビックリしましたよ。「あのおじさんなんで突然指の匂い嗅いだの?」って向かいの席の女子に思われちゃうので注意です。ウルフの仕草をDVDで勉強してトライしましょう。

[7]は、自分はバットマンとして『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』でスーパーマンと戦ってるのにスーパーマンの初版本を宝物として持ってるってのはだいぶ茶目っ気たっぷりの演出ですが、実はあともう一つ「映画会社違うじゃん!」って突っ込みたくなるお宝も出てきます。ぜひ見つけていただきたいですが、一瞬しか映らないので一回でこれに気づけたらあなたの動体視力は相当なものですよ。

エルミタージュ美術館 美を守る宮殿

「エルミタージュ美術館 美を守る宮殿」

 83分座ってりゃ、戦火から学芸員達が死を賭して美術品を守った250年の歴史を説明してくれて、スクリーンで筆先の毛の一本の絵の具の流れや、ベスト盤みたいな選りすぐりの名画をじゃんじゃん観られて、音楽もいいんだからこりゃいいわ。
美術館ってゆっくり歩くから足疲れるし、そんなに近づいて見れないし、説明文読むのも大変だし。入館料も同じくらい取られるし。

映画の最後に演奏される曲が何と『青銅の騎士』! 調べてみたら “青銅の騎士”は露皇帝ピョートル1世の騎馬像のことで、エルミタージュ美術館のあるサンクトペテルブルクを創建したのがピョートル1世だった!





【連載】ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜

フィルマガでの映画コラム連載2回目です。

前回は「なんか(文章)長くない?(文章量)決まってんの?」と近隣からクレームが来ました。。 文章量決まってないし内容もだいぶ自由なので、好きな映画ほど書きたいことがいっぱいで長文になってしまい、今回の『ヘルプ』は伸び伸び書いたら当初4500字で、、さすがに担当者さんから「あのぅ…」って感じで連絡来まして、「ですよね…」ってことでザクザク削減してなんとか2600字です。

差別問題扱ってる映画なんでね、どうしても筆が暴れるのさ。 
次回は1500字くらいに抑えたい。

  【『ムーンライト』と併せて観たい!】エマ・ストーン主演の感動作『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』




サウルの息子

『サウルの息子』

ナチス系はちょこちょこ観ているので
観た後にブルーな気持ちになるのは毎度のことですが
この映画だけはちょっと耐えられそうにないと思って敬遠していました。

『サウルの息子』を観ずに2016年の映画を語るなかれ、という文字を見たりしたし、
すんげえ賞獲ってるし
友人にも勧められたし、
さらに多大なご厚意もありまして
ついに観ることができました。



***


そもそも、ユダヤ人を地球上から根絶やしにする作戦を実行する中で
ドイツ軍は村々を転々としながらユダヤ人を主として障害者やロマ、同性愛者などを大虐殺していったわけですが、言っても結局は「人間」。
ドイツ兵たちは次々にPTSDになっていったそう。
PTSDになった兵士は戦場で使い物にならない。

ドイツ兵自身にこのユダヤ人消滅作戦をやらせるのは「非効率」だと考えて、
手を汚す作業はユダヤ人にやらせることに。
さらに、村々に自分たちが訪れるのもまた「非効率」なので
貨物列車にぎゅうぎゅうに押し込んでガス室のある収容所まで運ぶことになるわけです。
4〜5日ずっとぎゅうぎゅう詰めなので、、

あ〜もう書く気がしない。うおお。



***


ちなみに、
上に書いたことは『サウルの息子』には出てきません。
『サウルの息子』までの流れです。


何が言いたいのかというと、
僕がこの映画を観て思ったのは

「人間はこんなことに耐えられるように作られてはいない」

ということです。


人間は、
外国人排斥や人種差別や自国礼賛の集団心理の行き着く先でこんな地獄が作ったり、
毎日毎日一生懸命地獄を実行し続けられるんだけど
人間の精神はそれに耐えられるようにはできてないんだな、ということを感じました。
ドイツ兵だってPTSDになるわけです。

だけど、できてしまう、という恐ろしさ。
そういう流れができるとそれに乗っちゃう凡庸さ。

もっともっと人間をよく知らないと。
人間は弱いし凡庸。なのに、やれちゃう。



『アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発』も観なきゃ観なきゃと思いつつ東京での上映は終わってしまった。

人はちょっと命令されただけで人を殺せちゃう、という実験結果を出してしまったミルグラム実験の話。
ハンナ・アーレントの「悪の凡庸さ」説を科学的に裏付けた、とされて社会に衝撃を与えた実験。

この実験については大学の時に勉強しましたが、実験の仕組み程度しか覚えていなくて。


アイヒマンってのはヒトラーの下で「数百万の人々を強制収容所へ移送するにあたって指揮的役割を担っ」ていた男。

戦後12年経ってアルゼンチンに潜伏していたアイヒマンをやっと拘束(この辺りのことは「アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男」を)。
世界中が注目する中、エルサレムで裁判にかけられました(この辺りのことは「ハンナ・アーレント」を)。

人々は、アイヒマンはどんなに悪魔的な人間なのだろうか、どんな異常者なのだろうか、と思っていたわけですが、蓋を開けてみたら単なる中間管理職だったという衝撃。
命令通りに事務仕事をとても優秀に進めることができ自身の考えとして「上に従っただけ」というサラリーマン的思想の持ち主。

それが当時の人たちにとっても恐怖だったわけです。
え〜、隣のおじさんみたいじゃん、と。


そっから、じゃあアイヒマンはどういう心理的な過程を経て戦犯アイヒマンとなったのかと実証するための実験として行われたのが「ミルグラム実験」であり、それを描いたのが『アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発』

アイヒマンの後継者、という言葉の意味は、アイヒマンの後継者は我々だよ、と。
我々だってアイヒマンと同じことする可能性があるんだよ、と。




***


さて、
この『サウルの息子』はずっと一人称の映画です。

ホロコーストに連れてこられて同胞のユダヤ人たちをガス室に送り込む役割(ゾンダーコマンド)をさせられて数ヶ月後には自分も殺されるという運命がわかっている男、の視点でずっと描かれます。
映画の中での時間経過は1日半。

ナチスは、ユダヤ人を全部消し終わったらホロコーストの記録を全部消し去ろうとしていたので、ゾンダーコマンドもある一定期間働かせたら殺すし、ヨーロッパ各地にあったホロコーストも全部燃やして歴史から抹消するつもりでした。

なので、ゾンダーコマンドたちは自分たちは近々死んでしまうだろうけど、歴史からも消えてしまうことを避けるために、メモを残していました。

ホロコーストに連れてきたユダヤ人たちをガス室に入れる前に服を脱がせるので、そのポケットの中にある紙やペンを隠し持って(見つかったら殺される)、自分たちがやらされていることをメモし瓶に入れ土に埋めました。
戦後それらは発見され、かなり正確にゾンダーコマンドの日々の仕事がわかったと言います。


ゾンダーコマンドの中には記録に残すだけではなく、
どうやって手に入れたのかは描かれていなかったんですが
火薬を集めて焼却炉を爆破して集団蜂起を企てたりもしました。

実際にホロコーストでの集団蜂起はいくつかあったようですが
成功(と言えるのか)したのは一箇所だけで
『サウルの息子』はそこを舞台としています。



***




集団蜂起するためにゾンダーコマンドたちは兵士に見つからないように相談を繰り返さなきゃいけないんですが、ユダヤ人と言っても国が違うので言葉が通じない。
翻訳者を解しながら短い言葉で連絡し合うがなかなか効率的には行かず。

しかしみんな協力してなんとか焼却炉を爆破させるとこまでもっていきたいと思ってるんだけど、
実はひとりそれとは関係ないことに力を注ぐのがサウル。

ガス室のある子どもの遺体を「自分の息子だ」と思い、その遺体をかくまい(見つかったら殺される)、せめてユダヤ教に則って埋葬してやりたいと願い、それに奔走します。


映画を観ていると
「サウル!もういいじゃんソレ!その子の埋葬より脱出作戦に注力して!」と思ってしまうんだけど、違う。

その子の遺体はそのままにしてたら思いっきり焼かれて粉末にされて(記録が残らないように)全部川に撒かれてしまう(記録が残らないように)。
人間としての尊厳など骨粉の粒一つもないほどの処理をされてしまう。

自分の命をとしてでも
「自分の息子」の遺体を人間として埋葬したいと願うのが人間らしさか、
集団蜂起が人間らしさか、簡単には答えは出せないこと。


サウルにとっては、この方法で「人間らしさ」を示すことがナチスへの反抗だっただろうし、自分の人間としての証だったはず。




*****

注意しなけりゃいけないのは、
この映画が一人称であるから自動的に観客はサウル視点になります。

つまり被害者視点。
(おかげで自分がゾンダーコマンドになった感覚になれるのですが)

でも、前述通り、誰もがゾンダーコマンドを指揮する立場になりうるのです。
自分がそっちかもしれない。
人間を人間として扱わない立場に立たされて「だって上の命令だもん」とそれに従っていたかもしれない。

この映画がサウルの視点だからと言って、自分がサウルとは限らない。
サウルの背中をライフルで狙う上官が自分かもしれない、ということを知っておかないと。

戦時下においてだけの話じゃなく、
平成の世においても、自分は、他人の人権を踏みにじることを、しているかもしれない、と自分を省みる必要性を教えてくれる映画です。



*****


監督はこの映画を「英雄映画やホラー映画にするつもりはなかった」と。

なので全体としては淡々としてますし、画面の情報量が少ないので、グロ映像はそれほどないです。


最初を乗り越えればあとは大丈夫かと。
途中、ガス室がいっぱいになってそれでも追加で列車が来た後に実施されることのシーンはまたとんでもないですが。
まぁその2つですね。

その2シーンさえクリアできれば、観れます。

どうぞ、頑張ってください。




*****



最後に僕のトラウマ映画3本。


『鬼が来た!』
『サラの鍵』
『光の雨』

です。
リンク貼りません。

四コマ映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』

映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』 ふとした事故超人的なパワーを得たおじさんが主人公。
腕力はあるが足の速さは変わらないので移動はスクーター。
ヒロインが最高にキュートだし、敵はヒース・レジャーのジョーカーを彷彿とさせる不気味さ。


ちょっとしたグロもあるしエロもあってサービスも十分だけど、ヒーローものとして過剰ではないのが好感が持てます。

イタリアでは実写のヒーロー映画が根付いていないとのことで、この映画が初の成功作で興行的にも批評的にも良い結果を出した模様。

ヒーロー映画を撮り慣れていないという点では日本も同じで、その不器用な感じ、行ききれない感じが主人公のキャラクターとちょうど重なっていていい相乗効果をあげています
映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』

ラースと、その彼女

WebマガジンFILMAGAで映画のコラム連載をさせていただくことになりました。
ミニシアター系の旧作発掘係として月2回映画紹介していきます。
どうぞよろしくお願いいたします!
一発目は僕が一番好きな映画!

ラースと、その彼女
昨年の1月に架空の映画紹介をするという謎のイラスト展を開いて、3月からは四コマ映画ってのをコソコソ描いておりましたが、なんとまぁこんなことが起こるのでしょうか。
映画のコラムの連載ですよ。なんてこった。。
一応仕事として請けているので、この分量を月2回ってかなりヘビーなのですが、頑張ろうと思います。



四コマ映画『ムーンライト』




「この子らを世の光に」は社会福祉の父と呼ばれる糸賀一雄の言葉。

この子ら(に)世の光(を)
じゃなくて
この子ら(を)世の光(に)。

「障害児に光を当ててあげよう」ではなく、
「障害児の光を世の中に当てよう」という考え方。

この映画の主人公は、貧困層の黒人でセクシャリティ的にも未だに後ろ指を刺されるもの。

本当はなんの困難でもないはずのこの3つ(貧困は困難ですね…)だけど、社会の無理解や堂々とした差別感情によってただ普通に生きるということを阻害されてしまう。

映画では、主人公シャロンを年代別に子供、高校生、大人のパートに分けて3人の俳優で演じ、一人の男性の半生を静かに描いている。

少年期のシャロンは、家にはシングルマザーで麻薬中毒の母がいるがネグレクトでさらに学校に行けばいじめられる。

ある日、いじめられて廃墟に隠れているところをあるおじさんに助けられ、その後困った時など助けてくれる存在になってくれる。
シャロンがおそらく初めて、彼の家の真っ白でふっかふかの枕とベッドで眠る姿が愛おしくも悲しい。
この人物、シャロンにとって父親がわり、そして生きる道しるべの人物となる。

高校時代のシャロンもまた、学校でのいじめは続き、母の麻薬中毒も強まっており、自分のバイト代も母の麻薬を買う金として使われてしまう。

そして、大人になったシャロン。
華奢だった体はアニメのような筋肉隆々になり、周りを威嚇するように装飾品をつけ、高級車をステレオガンガンで走らせる。
が、その目だけは、かつての弱い、常に怯えたような目のまま。

***

衝撃なのはこれのほとんどが実話だということ。
主人公に起きることは全部、原作者か監督に起きたこと、だそう。
(原作者の母も、監督も母も麻薬中毒であった)
実際に起きた(つまり現在も起きている)衝撃的なエピーソドの連続だけど、直接的な描写はなるべく避けて、ひたすらに美しい映像の中で意外と淡々と物語は進む。
こんなに過酷なストーリーなのに「もう一度見たい」と思えるのは映像が美しいからかもしれない。
この世界にもう一度浸りたいと思える。

****

シャロンの父親がわりになるフアンという男がかっこよくて、いちいち名言を言ってくる。
「自分の人生は自分で決めろ 周りに決めさせるな」はわかりやすい名言だけど、
本当に何気ないし、
全然名言のつもりもなかったと思うけど
僕がぐさっときたのは
「ここで何してる」。
あ、俺ここで何してるんだろと思っちゃうし、
そういえば「ここで何してる」ってあんまり言われたくない。。
おそらく大人シャロンも昔フアンに言われた「ここで何してる」という言葉が常に自分を追いかけてきてるんだと思う。

***

話が個人的であればあるほど普遍性を持って観る人の心に直接刺さってくる。
それはつまり、住んでる場所が違おうと体の表面の色が違おうとセクシャリティが違おうと、人間であれば何が悲しくて何が嬉しいかは同じだということ。

本当はこんな映画なければよかった。
こんな映画が生まれない世の中ならよかった。
「観てください」なんて言わなくていい世の中ならよかったのにね。