映画『万引き家族

安易なオチに連れて行かない映画『万引き家族』(2018年製作の映画)


"端正な作りの映画"ではないと思います。

どこに焦点が当たっているのかがわかりにくいので、
散漫な印象はあります。

これが計算でやったことなのかはわかんないんですが、
覚悟の上だったということはキャスティングから予想できますね。

ほとんど血縁のないこの6人の〝家族〟自体が事情を抱えすぎだし、それぞれの関係性も明瞭ではないので
いろんなことが気になり、引っかかったまま、話は進んで、
そんな中で、
ほとんどワンシーンしか出てこない役に
柄本明、池脇千鶴、高良健吾、緒形直人、森口瑤子、池松壮亮を置いているので、「多い多い多いっ!」と思います。

これは多分「焦点を絞りたくない」という意思の表れではないかと。

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四コマ映画『万引き家族』→→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2050

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これだけ人数いてそれぞれに事情があると「誰が悪いのか」を決めにくい。

一番悪いのはDV夫の山田裕貴かな、とか思うけど、全然描かれないのでそう思いにくいし、しかももし山田裕貴自身も子供の頃虐待を受けていて…なんてエピソードがあったとしたら、もうただの加害者じゃなくなってしまう。

異常を察していながら見逃していた柄本明だってどうなの。

池脇千鶴が持っている価値観こそが遠回しにたくさんの人を苦しめて来ていただろうし。

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「何が良くて何が悪いのか」をとにかく明確化した昨今。
悪いことした人にはとにかく謝罪させたい昨今。

この『万引き家族』という映画(タイトルからして)を毛嫌いする人もいるのもしょうがないし、この映画が引き起こしている波紋こそがこの映画の価値(勝ち)なのかも。

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黒澤明『羅生門』のようなひとりひとりの〝供述〟が後半続く。
それによって〝事件〟の全容が明らかに。

明快じゃなかった6人の〝家族〟の繋がり(or繋がりのなさ)もやっとわかります。
誰の視点で語るか、それによってこの家族の形も変わって見えます。

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四コマ映画『万引き家族』→→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2050

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ネタバレは以下。







「血縁に疑いをかける」映画ではあるけど、「血縁なんてなくてもオールオッケーだよね!こんな家族素敵だよね!」などというスッキリした感想を持たせてくれない。 
リリー・フランキーと安藤サクラ夫婦は相当な犯罪者だし、子供のことをちゃんと考えているとは思えない。
この映画を万引き礼讃とか犯罪促進映画とか言ってる人はどうかしてる。全然そんな映画じゃないじゃん。



ケイト・ブランシェットが嫉妬したという安藤サクラの泣き演技。これかぁ、と。それを観に行ったようなものですからね。

とにかく流れて来た涙をすぐに拭く!
これ見よがしに涙をホロリと流したままにしたりしない。
涙出たハイ拭く!出た拭く!
確かにこんな泣き方観たことない。

私は泣いてない。悲しくなんかない。そういう泣き方かな。



松岡茉優だけ異質でした。あのテレビCMのままの笑顔があの中では異質。「ダメじゃ〜〜ん」と思っていましたが、あの子だけはあの家族に溶け込んでいなかったんですよね。おばあちゃんがいるから来てたけど実はそのおばあちゃんも金目当てだったっぽいし。

あの武装のような笑顔も演技だとしたらすごい。
けど、単なる偶然のような気もする。。