映画『サタンタンゴ』あらすじ&ネタバレ

タイトル。「SATANTANGO」

朽ちた牛舎や家屋の横パン。
大量の牛が出てくる。
雄牛が雌牛に交尾を迫るが雌牛は声を出して逃げる。
一頭が「はっじまっるよ〜」みたいな感じでカメラの前まで寄ってくる。

横パンしながら牛と豚、アヒルも登場。
荒れた村。



ナレーション
「雨季が来て畔が泥沼になり、町と隔絶される。街からの音は聞こえるはずもない」


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1【やつらがやってくるという知らせ】



屋内。窓からの日差し。真っ暗だったが、長回しで次第に明るくなる室内。
「分け前を取ったら今夜出よう」とフタキ。

水を貯めた桶にまたがり股間を洗う女。精液を掻き出してる模様。
シュミット夫人。
「亭主が来たわ!」慌てる2人。

「今夜には高飛びだ!」とシュミット。
「一年働いた分を取られてたまるか!やっと農園が帰るんだぞ!8人で分けたら何も残らん!」
「お前と三等分だ」
「クラーネルと組んで金を持ち逃げしようとした男を信じられるか?」
「浮浪者みたいな連中が金を持ってたら名前も聞かれずに逮捕されるわ」
「都会で働くんだ!全て忘れて!」

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ドアをノックする音。「シュミットさんいる?」と女の声。

「追い出せ!入って来たら殺せ!」
シュミット夫人が対応。

イルミアーシュが戻ってくるらしい。

「一年半も前に死んだやつがくると?」
「やつは魔術士だ。クソからでも城を作れる」とフタキ。
「イルミアーシュからは逃げられない」

シュミットが先に外へ。フタキが後を追う。

ナレーション「がんばれ!黄金の人生だ!」

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2【我々は復活する】


警察署の中、椅子に座る2人。
ペトリナとイルミアーシュ。
部屋の中に呼ばれて召喚状と身分証明書を提出。

警視は「人は自由が嫌いだ。怖いのだ。恐ろしいことなどないのに。秩序こそ恐ろしいのだ」

2人は警視からある任務を受ける代わりに釈放される。

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2人は酒場へ。
「全員爆破してやる。鼻にダイナマイトを詰めて殺してやる」と叫んでから外へ。

「やつらは下僕だ。一生変わらない
何が起きたかわかっていなんだ。動物の群れのようについて行きたいだけだ
お互いに疑心暗鬼になりながらも、毎晩布団の中に隣の女房がいればいいのさ」とイルミアーシュ。

シャニが合流。2人が死んだという噂を流した男。

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部屋の中から双眼鏡で外を監視する男。医者。

「フタキはそうやら何かを恐れている。フタキは死を恐れている」
外の様子をノートに記録していく。
「人は皆死ぬ。フタキ、お前もだ」
スケッチする。昔の栄えていた頃の村を描いたスケッチ。
昔に描いたスケッチを引っ張り出して、それを見てまた描く。

シュミットが裏口から出てくる。
アルカリの草地に。
向かう道で立ち止まり、フタキはコッソリ家を抜け出し納屋に行き、壁に隠れる。
フタキは動かない。
と記録する。

雨季には徒歩で街に行けなくなる。
春までバスは来ない。
村から出られない。

医者、酒に酔って転んで倒れて立ち上がってベッドに。何回も転んでしばらく動かなくなってから再び動き出す。
「だいぶ酔ってしまったようだ」
インスリン注射を打つ。
「酒がなくなった。どうやら外に出なくてはならないようだ」

***

医者は外に出る。外は雨だが傘を差さない。息が白くなるほど寒い。
最初から最後までずっと雨降ってるが誰も傘を差さない。

廃墟に逃げ込む医者。2階から女性が電話する声が。

「先生やる?安くしとくよ」と女2人が、火を囲んでいる。
この廃墟で客を取っているよう。

「シャニもいる。そうやって生活すれば?」
「男に金が入ればキンタマが黙ってない、女にも金が入るわ。」

廃墟を出る医者。
「もう長くはないわね」と医者について語る女たち。

ずぶ濡れになり倒れる医者。
死んだかと思いきや再び立ち上げる不死身医者。

林の中、少し先の道を歩く人に声をかけるも気づかれず、倒れる。

翌朝、発見され肩を担がれ救出。馬車の後ろに先生乗っけて馬車は進む。

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<休憩>

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3【蜘蛛の仕事 その一】

酒場。店主と男。もう1人客が来る。外は雨。

時計の音?(三拍子。秒のテンポではない音がずっとBGMで鳴っている)。
すごい雷。

ケレメンが入って来る。
「イルミアーシュとペトリナが来る。」
「イルミアーシュが無煙火薬の話をしていたらしい」
「俺のものはお前たちには渡さない!ここにあるのは俺のものだ。」と店主。
店主は倉庫でやけになり、大量の瓶を叩き割る。
しばらくして落ち着き、箒で割れた瓶を掃除。

「連中は朝にはここに着く」「いまは11時か12時だ」
「地面が臭いわ」とシュミット夫人。

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4【ほころびる】

兄と妹が土に金を埋める。
「金の木がなるの?」と妹。
「水をあげ続ければな。みんな羨ましがる。」
「金があれば客間で寝られる?」

兄はシャニ。妹はエシュティケ。

母が客を取っていて、エシュティケは家に入れない。
朽ちた納屋に入り、そこからドアを見つめるエシュティケ。

エシュティケ、猫を抱えながら鼻歌。
「粗相したのね!」と猫を叱る。
猫を引きづり、叩きつける。「私の方が強い」
猫を網に入れる。猫、寂しそうな弱い鳴き声。

家から白い粉を入れたミルクを持ってきて
猫の顔を押し付けて無理やりに飲ます。

みるみるうちにおとなしくなる猫。
エシュティケは部屋の端から猫をじっと見ている。
猫はミルクに顔を突っ伏したまま動かなくなる。

白い粉は猫いらずだった。

猫の遺体を脇に抱えて林に戻ると金は土から掘り出されていた。
「俺が必要だったから取った」と兄。

エシュティケは雨の中、窓の外から酒場を覗き込む。
酒を浴びるようにのみ、踊る大人たち。

人間みたいな顔をした少女。
(人間離れした顔の少女)

エシュティケは畔を歩き続け、廃墟に。
ポケットの猫いらずを飲む。
脇に猫を抱えたまま仰向けになる。

「ついに物事は単純になった。
1人じゃないとわかってた。
天国にはみんないる。天使がくるのがわかった。」
とナレーション


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5【蜘蛛の仕事 その2(悪魔のオッパイ 悪魔のタンゴ)】

イルミアーシュとペトリナが村に着く。

酒場ではみんな金を分けている。
「娘を見かけなかった?見つけたらひっぱたくわ」とエシュティケの母。

ボークトットボークトット。

「連中を見つめるとすぐ悟られる。消えちまう。
本当の危険は下から来る。恐怖の停止状態がくる。
助けも来ない。
イルミアーシュは玉ねぎ一個で大成功した。
10日間タダで飲んだ。
ここは俺は築いた。
いつかこの国にも秩序が必ず訪れる。」
と店主。

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泥酔しながら踊り狂う。それを窓外から覗くエシュティケ。誰も気づかない。

酒場に来た医者はエシュティケに気づいたが冷たくあしらってしまう。

エシュティケはこの後、朝まで歩き、自殺する。

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額にパン乗っけて何往復もする男。
急に音楽止まる。ハリチ校長登場。

「さすがハリチだ」
「タンゴはいかが?」シュミット夫人がハリチを誘う。
「あなたは他の連中とは違うわ」

「連中がまた仕事に戻れて、私も好調に戻れたら、あなたを街に連れて行きたい」とハリチ。

みんな疲れて眠る。蜘蛛がビンやコップに糸を張る。
顔にも糸。

準備を始めている。再び動き始めるのだ。

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休憩

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6【イルミアーシュが演説をする】

エシュティケの遺体をみんなで囲む。

この悲劇の原因はなんなのか。この無垢な少女を殺したのはなんなのか
全員が無罪だと、皆さんは無実だというのでしょうか。
ならこれは何。
無実の人々による被害者?

イルミアーシュの演説によってみんな金をエシュティケの棺桶に入れていく。
金が貯まっていく。


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7【正面からの眺望】

イルミアーシュとシュミット夫人がSEXした後。
服を着て髪を整える。

酒場の前でイルミアーシュ演説。
「さあ出発です。皆さんは自由なのです」
出発する村人たち。

それに対し「くたばっちまえ!」と叫ぶ店主。
「店を閉めるしかないね」とおそらく店主の母。


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荷物もまとめて出ていく人たち。家具も壊していく。
「ジプシーに盗られるよりはね」
「美しく素晴らしいハンガリーよ」
一行はある廃墟に到着する。
そこはアルマーシ荘園。5棟はある大きな建物。

女性は酒を飲む。ここで寝泊まりをする。
「輝く未来が待っているぞ!」

フクロウが一羽、ジッと見ている。

村人は寝入るがみんな悪夢にうなされる。


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8【天国に行く?悪夢にうなされる?】

イルミアーシュの演説。カメラの位置、先ほどと反対。酒場からの視点。

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「連中が気づいたら大変なことになるぜ」とペトリナ。
「俺たちの時代が来たんだ。イルミアーシュ版の蜘蛛の巣の網だ!」とイルミアーシュは村人を上手く騙せたことに安心している。

シュテイゲルワルトの店に向かう。
霧に怯えるイルミアーシュ。「霧を見たことないの?」

途中、町の広場で馬が大量に現れる。
「誰を応援する?自分だ」
自由になり、あてもなくうろうろする馬たち。人間のよう。


シュテイゲルワルトの店。

警視に手紙を書く。内容は意味がわからない。

猟銃商人を呼ぶ。爆弾を頼む。
「私は民衆解放者ではない。悲しみの研究家だ」とイルミアーシュ。

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9【裏からの眺望】

荘園で朝を迎えた一行。イルミアーシュが来ない。
「あいつは何を考えている」「俺たちは何しにきたんだ」
「俺たちはまた無一文だ!」

「エシュティケは猫いらずを飲んだだけだ!」
「イルミアーシュが来るのを待とう」
「誰のせいで金を取られた!」

イルミアーシュが来た。イルミアーシュに不満をぶつける一行。

「俺はみんなのためにもう3日寝てない」とイルミアーシュ。
「荘園計画を進めている。が、あの連中から監視されている。しばらくの間、圏内に分散し、彼らの監視がゆるくなるまで待ちましょう。その間、お互い連絡をとってはいけません。私とだけ連絡を取れます。さ、出発だ」

「金を返せ!」
「根性も信念もないなら返そう。自分の利益がわからないものには必要ない。」
返された金をまたイルミアーシュに返してしまう。。


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トラックの荷台に乗せられてどこかへ。すごい雨。もちろん傘ナシ。

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どこかについて、数人降ろされる。
数人(ハリチとフタキ)に荷台に乗ったまま。

イルミアーシュはメンバーそれぞれに地名を伝え、そこで用意した職に就くように指示する。
それぞれに当面の金(1000フォリント)を渡す。
「本当の任務を忘れないように!」

フタキだけは荷台から降り、去って行く。
悪い足を引きずって画面の奥まで見えなくなるまで映される。
フタキだけが唯一、イルミアーシュから逃れることができた。人間の希望。


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10【悩みと仕事ばかり】

イルミアーシュとペトリナとシャニが街を歩いている。
もっっのすごい風が後ろから吹いている。枯葉やゴミなどを巻き上げている。

イルミアーシュから報告書を受け取った警官。
タイプする。

シュミット夫人。誰とでも寝る女。これに例外はない。

などと村人一人一人についての報告。

フタキはただ1人危険。だが、役に立つ。

タイプし終えた警官2人。「今日もいい日だったな」


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11【輪は閉じる】

医者の部屋。酒を飲む医者。

連中は何もせず、動かないでいることで、自らが最も恐れているものに捧げていることにも想像していないのだ。
どうせいびきをかき、天井を見ているだけ。
外に出る気もない。


上着を着て外へ。
鐘の音が聞こえる中、雨の降っていない道を
こちらに向かってまっすぐ歩いて来る医者。

荒廃した畑、斜めのカメラアングル、ドロドロの畔。
耳鳴りのように響く鐘の音。礼拝堂に近づく医者。
「トルコ軍が来るぞ!」とエンドレスで叫びながら鐘をうつ男がいる。

狂った男の鳴らす鐘を背に歩く。
「私はバカだ。天の鐘の響きを魂の鐘と間違えてしまった。私としたことが」と医者。

家の窓に内側から板を張っていく。部屋は次第に真っ暗になっていく。

医者はノートに書く。
「フタキは鐘の音を聞いて目を覚ました。一番近い礼拝堂は8キロ離れているが、そこには鐘がなかっただけでなく、戦時中に塔も倒れてしまっていた」




映画終わり




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"労働忌避(働いてない)の罪でイルミアーシュたちは逮捕されたけど、警察のスパイ網を組織することを交換条件にイルミアーシュたちを釈放。
彼らは農民たちに真実を伝えることなく言葉巧みに金を巻き上げて、警察のスパイとしてあちこちに送り込んだ”

ハンガリー語学者・元東海大学准教授である深谷志寿さんの解説より引用




四コマ映画『サタンタンゴ』→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2371