四コマ映画『聖地には蜘蛛が巣を張る』(2023








『ボーダー 二つの世界』(2019)のアリ・アッバシ監督作

公開してる時に好評は聞いていたものの重く固い社会派のイメージがあってちょっと足が遠のいていたのですが、
『ボーダー 二つの世界』(2019)のアリ・アッバシ監督だと知って、こりゃ普通の社会派では終わらんだろうと期待して観ました。

ちなみに同監督の『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』(2024)は、再生しましたが腹立ちすぎて途中で止めて以降そのままです。。



結局は『ボーダー 二つの世界』をやってる

聖戦(イランイラク戦争)で殉死できなかったことを恥じている初老の男が、自尊心を高めるために理由をつけて娼婦を殺していくという迷惑な話。

戦争で仲間はたくさん死んで英雄扱いをされるの対して、
生かされた男たちがその後の生き方に迷う、というのはよくあることのよう。

しかし、その男たちみんなが周囲に迷惑かけまくるわけではないんよね。
平和な社会に順応して心を癒していく人がほとんど。

英雄になるために殺人を犯すのはボーダーを越えちゃった人。

未見ですがおそらく『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』もボーダーを越えた男として描かれているのでは?
そう考えるとアリ・アッバシ監督がトランプを描く理由が腑に落ちる。

犯罪者を賞賛する周囲

連続殺人犯の妻が夫を庇うために彼を賞賛するんですが、それは無理やり自分を納得させようとしている感もあります。息子もいるし。

殺された娼婦の母親が「正直殺されて良かった。あんな恥知らずな娘」と叫ぶシーンもあるけど、父親は「本心じゃない。毎日泣き暮らしている」と言う。

↑この2人の女性の心情はわかるんです。
ただ、ダサいというかキモいのは連続殺人犯を賞賛する周囲の声ですね。

よくぞやってくれた!みたいな感じで彼を持ち上げて英雄視する群衆の卑怯さ。
社会への燻りを抱えている者たちが自分は何にもしないんだけど、社会を揺るがすような大胆なことをした人間を「ワッショイ!」と支えることで、自分も何か大きなことをしているような気になっている感じが不気味。

この構造が今めちゃくちゃ爆裂していて、迷惑。。
ほんとにどうすりゃいいのかね。。